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言問だより

【 平成十六年 如 月  】
 
波浪激しき入試航路

変わらぬ都立志向

本紙がお手もとに届くころ、ちょうど東京都立高校の入試が行なわれます。今年の出願者はほぼ昨年並みで(〇・〇一ポイント減)、都立志向の高まった近年の傾向を堅持していると言えそうです。公立校も生き残りをかけると言われる現今、各校とも独自色を打ち出して学校改革につとめており、子どもたちのためになる学校づくりがすすむよう、ご父兄とともに祈るばかりです。

平成十五年度からの都立高の学区撤廃は、かなり大きなうねりを志願者たちにもたらしました。日比谷高校の願書締め切り時倍率が三・五九倍に及んでいますが、これは都立離れ、名門凋落と言われた時代には、考えられなかった数字です。日比谷に続いて自校作成入試を導入した西高校も男子が二・九八倍。都内のどこからでも受験できるというメリットは、トップ校には大きな追い風になったのが見てとれます。むろん受験生たちにとっても、住所地にかかわらず自分の行きたい高校を受験できるのは喜ばしいことでしょう。学校群の時代に受験期を過ごした立場から考えると、何ともうらやましい限りです。

ただ、このことは受験生たちに対し、当然きびしい競争をもつきつけます。昨年の日比谷高校の実質倍率は一・八五倍でした(応募者四五三名に対し、実際の受験者が二七五名。難関私立を第一志望とする受験者が、私立に合格すると都立を受験しないため、このようなことがおきます)。日比谷というビッグネームへの憧れで大きなリスクをとるのか、地元の名門小石川高校を目標とするのが堅実なのか。文京区に住む受験生には、何とも悩ましい選択でしょう。また小石川にしても当然、旧第五学区(台東区、中央区、荒川区、足立区)を主とする他地区の受験生たちに望まれるわけですから、高倍率になることは避けられません。折からの都立高人気とも相まって、いわゆる名門校や人気校では、競争は激化する方向ととらえておくのが良いでしょう。一方で単位制やコース制、エンカレッジスクールなどの新しい試みが随所でなされる昨今でもあり、ひと口に都立校と言っても、そのバリエーションはますます豊富になりそうです。

ちなみに平成十五年初時点では、進学重視型の単位制高校として墨田川、国分寺、新宿の三校があり、また「進学指導重点校」として日比谷、西、戸山、八王子東の四校が、そして「進学指導重点準備校」として青山、立川、国立の三校が指定を受けるなど、進学重視型の学校編成も進められています。詳しくは、東京都教育委員会のホームページをご覧になると良いでしょう。

私立中はサンデー・ショック

今年は都内私立中の入試解禁日である二月一日が日曜日でした。プロテスタント系の女子校では、礼拝と重なるため従来から日曜の入試を避ける慣わしがあり、今年も多くの学校が、入試を二日にスライドさせました。このため、例えば桜蔭と女子学院など、例年なら受験できないはずの二校を受験するというケースが生じたのです。ごく一部の受験生には、チャンスがふえてよかったかも知れませんが、このために全体が大きく流動化したわけですから、大多数の受験生にはきびしい競争になったと思われます。

なお、来年は各校とも一日に戻るはずですから、新六年女子で来春受験される方は、平成十六年ではなく十五年の応募状況を参考になさって下さい。

第1回

東大前教室では、これまでお伝えしてきた文化イベントのほか、季節にあわせて生徒主体のイベントも開催しています。第一回は、昨年十二月二十三日に、教師と塾生のみのクリスマス会を行ないました。ケーキやチキン、サンドイッチはもちろんのこと、和やかな雰囲気の中で先生たちが歌ったり、生徒諸君のかくし芸を堪能したり。o・ヘンリーの『賢者のおくりもの』の朗読では、学年によって受け止め方が大きく異なっていたのも、興味深いことでした。

ねがうところはただひとつ「生徒のため」。今後も東大前教室では、生徒のための教室イベントと文化イベントを開催し、本紙上にてお伝えしつづけるつもりです。写真は教室階段に掲示してあります。 

「長 良 川 河 口 堰 」

名古屋から近鉄またはJR関西本線で愛知県の弥富(やとみ)を過ぎると、木曽川をわたり、三重県の長島町に入ります。ここは木曽川と長良川にはさまれた、中州のような土地。古くは木曽三川(さんせん)の氾濫で幾度も地形が変わり、また織田信長と闘った一向一揆(長島一揆)の地としても、歴史に名をとどめます。

江戸時代の河川改修によって木曽・長良・揖斐(いび)の三川はひととおり流路が確定し、今では並行する鉄道線と国道一号線のルートでは、長島から桑名へわたる時に、長良川と揖斐川をあわせて越えます。堤防ひとつで背中合わせになっている長良川と揖斐川のロケーションは、かつては一見した時の水の色のちがいから水質のちがいまでもが見てとれるほど、長良川の水のうつくしさを教えてくれる、まさに一目瞭然の対比の場でした。「日本最後の清流」とも言われた長良川の素朴でうつくしいたたずまいが、今でも目に浮かびます。

平成七年、あの阪神淡路大震災が起こった年に、この長良川の河口に作られていた長良川河口堰(かこうぜき)が完成し、運用を開始しました。その分析や評価ということは、ここでは書きません。ただこの長良川河口堰が、その後〝ギロチン〟として広くTVなどでも報道された「諫早湾干拓事業」や「宍道湖・中海淡水化事業」、また遡って八郎潟=大潟村の干拓などと同様、国の政策と自然環境の保全の相克という、二十一世紀の私たちにとって避けることのできない大きなテーマの中に存在する、かなしく象徴的なモニュメントのひとつであることは、間違いありません。関心のある方がおられましたら、語り合う会なども設けてみたいと思います。

堤防をちひさき蟹が這ひまはり這ひまはりつつ雨にぬれてゐる

一九九一・一〇・五 漂情

 

Vol.4 「バリトン」

男性歌手の声域では、一般的にテノールやバスが知られていますが、比較的なじみの薄いのが、両者の中間に位置するバリトンではないでしょうか。かつてクラシックから流行歌手に転じた名歌手たち、例えば藤山一郎さんや楠木繁夫さんなどが、この声域です(ハイ・バリトン)。上野音校(東京音楽大学=現東京芸術大学)で本格的な声楽を学んだ方達の正しい歌を流行歌で聞くことのできた、良き日本の時代がありました。

~みすずかる信濃③

新宿から信州をめざす中央本線には、三種類の特急が走っています。振り子式(カーブを通過するとき、振り子の原理を利用して遠心力を処理し、高速で走り抜けられるようにするシステム)E三五一系を使用、新宿―松本間を最速二時間二十八分で結ぶ「スーパーあずさ」と、速度よりも室内の居住性に意を払った新型車輌E二五七系使用の「あずさ」「かいじ」で、このうち「かいじ」は甲府どまりが原則です。ほかに異色の特急として、横浜発で横浜線を通り、八王子から乗り入れてくる「はまかいじ」号(「踊り子」号と同じ一八五系を使用)、また行楽期には、新宿から「湘南ライナー」などで使われている全車二階建ての二一五系が「ホリデー快速ビューやまなし」し」号として小淵沢まで走ります。

さらに千葉発の「あずさ」「かいじ」などもあり、バリエーションは豊富ですね。
さらに中央本線は、車窓の景色も彩りが豊かです。立川を過ぎると多摩川を越え、それまでの平坦な眺めが一変し、奥多摩や丹沢の山並みが見えてきます。そして快速電車の終点である高尾を過ぎると、深い山の世界へ。   つづく

                

その四.「か ん ず り」

雪深い越後の国=新潟県でも、とくに豪雪地帯といわれる新井市。日本海側へすこし下ると上杉謙信の居城だった春日山城があり、日本のスキー発祥の地も、ここからほどない位置となります。

その越後新井の、知る人ぞ知る名産品「かんずり」。細長いびんに入ったこの食品(調味料)は、みごとに赤い色をしています。みなさんは、赤いびん詰めといったら何を想像なさいますか?唐辛子?そう、まさにこの「かんずり」は、地場産の唐辛子を雪にさらし、塩・糀・柚子などとあわせて三年間も熟成させた、味わい深い辛味の調味料なのです。その使いみちですが、鍋や焼肉の辛味づけは言うに及ばず、お味噌汁やカレーのアクセント、納豆の辛子のかわり、ラーメンやそば・うどんにお好みで、などなど、尽きるところを知りません。以前は関越自動車道のサービスエリアで買っていましたが、最近はかなり広範な小売店で目にします。御徒町の「吉池」地下1Fなどが近いですね。

今月のトピック 「花 粉 症」

花粉症の季節です。症状は人によりさまざまですが、一度はじまるととにかくつらいものですね。 原因は主なものがスギ花粉といわれ、天気予報などでも花粉情報が伝えられますが、その他のものがアレルゲン(アレルギーを起こす因子)になっている場合もあります。治療法もいろいろありますので、薬局で薬剤師に相談しましょう。詳細は十七号線教会そばの三幸堂薬局へどうぞ。

まっすぐ前を見て!

前号では、大人が子どもに知らないことを教えるのだ、と書きました。でも近ごろは、 子どものお手本にならない大人が増えていますね。とくに最近多いのは、本や雑誌を読みながら歩いている人。もしも小さな子や、体の不自由な人が前にいたら、どんなことになるでしょう。危険きわまりないことですし、そういう人は車の運転をする時も、同じことをやりかねません。みなさんは、ぜったいこんな大人にならないように。

じつは、これは携帯電話のメールが普及してからのこと。携帯電話の大きな弊害のひとつです。歩きメールはぜったい禁止。歩きでも、自転車でも、まっすぐ前を見て、安全をたしかめましょう。大人のわるいところは見習わないでね。

高校無償化について

入試の時期は、いつも塾関係者にとって一番気のもめる季節です。何といっても実際に試験を受けるのは受験生本人たちですから、当日は私たちの手はとどきません。万全を期して送り出したつもりでも、みんなきびしい競争に臨んでいるわけで、思いのままにならないこともあり得ます。教える側にできるのは、まず正しく学力をつけること、自信を持たせること、平常心の持ち方を教えること、までであるのが現実です。その後の試験当日には、祈るような気持ちで子どもたちが帰ってくるのを待っている、そうした意味では、保護者の方々と同じ思いであるのかも知れません。せめて自分が出会った子どもたちには、最良の結果を得て欲しい。二月=如月という月は、私たちにとってそんな思いのひと月なのです。どれだけ年を重ねようとも・・・。

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漂うことば

願はくは花の下にて春死なむその如月の望月のころ

意味

(作)西 行 

花を愛し花をうたった歌人西行の一首として、あまりにも有名。「北面の武士」と いう地位を捨て、家族をも擲って(なげうって)、あえて漂泊の道に漂い出て行った 西行は、つねに生死のはざまを生き,自己の美意識を完結させるべく、その生きざまを規定していたのだろう。「風になびく富士の煙の空に消えてゆくへも知らぬわが思ひかな」の代表作から、それは読みとれる。掲出歌では、「下」は「もと」と読み、 「花」は桜に特定される。そして西行は、その望みどおり旧暦二月に入滅した。

漂うことば

如 月 (きさらぎ) 
旧暦二月の別称で、「生更ぎ」の意。春を得て草木が更生することをいう。寒暖くりかえすなか、早春の息吹きを感じるのが今の暦の二月であり、一方旧暦のそれは、まさに西行の望んだ桜の季節。いずれにしても「如月尽(きさらぎじん=二月の終り)」とはうつくしき言葉である。透明な春の光のかがやく時。

漂うことば

Class.4
出雲大社のある県は?

縁結びの神様として有名な出雲大社がある出雲の国。歌舞伎の創始者阿国(おくに)も、ここの出身です。古くは大和朝廷に最後まで服属しなかった強国として、出雲一国のみ「風土記」が完本で残されるなど、日本の古代史に特別な位置を占めた国です。
旧暦十月の別称は、神無月(かんなづき)。全国から神々がいなくなる月です。ではこのとき、神様たちは一体どこへ?そう、いなくなった神々は、皆ここ出雲大社に集まるのです。だから出雲では、十月は神在月(かみありづき)。さて出雲とは、何県でしょう?
<前号の答え> 愛知県です。平成13年度の都立高入試の社会の問題中に、木綿生産の発展についての設問があり、「主要な産地の三河」を地図上で判断できれば正解が得られるという内容でした。旧国名のうちで、主要なところはおさえておきましょう。